仏画コラム
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15,宝篋印塔図

O-169 1.8×4.0尺丈

仏画

 

仏画
一切如来心秘密全身舎利宝篋印陀羅尼経
現在日本で建立されている宝篋印塔はほとんど墓、相墓の供養塔として建てられています。
しかし歴史をたどつて行くと供養塔としてではなく、色々な思いや目的達成など祈願のため
の石塔と言う面もあります。宝篋印塔の基となつたものは中国より伝わりましたが発祥伝説
をたどると紀元前3世紀の印度にまでさかのぼる歴史ある塔です。「一切如来心秘密全身舎
利宝篋印陀羅尼経」といいその意味は「一切の如来の奥深い悟りの神髄と全身舎利の功徳を
集積した篋(箱)という陀羅尼」の経と言う事で一番優れている教えを凝縮させて含んでい
る言葉で、梵字音写のまま唱えます。本経は806年平安初期に弘法大師が請來されました。
御請來目録に宝篋印陀羅尼経1巻と記載があります。請來されたのは日本に当経典が存在し
なかつた訳で、本経典、内容的には一つも難解なところはなく、むしろ万民の為の教典であ
り伝承普及するべきであると思われます。釈迦牟尼世尊が説かれた宝篋印陀羅尼経は五蜀の
悪世に生まれ、依る所なく、頼む所なき衆生を憐れむ故でありこの深法の法要(真髄)は久し
く世間に住し、衆生を利益し安穏快楽ならしむること広大無辺であろうと説いています。
譬えば幡(仏の法門の象徴)の上なる如意宝珠が常に高貴な宝を降りゆらかして行者の一切
の願を満たすが如くである。最後に仏は金剛菩薩に告げる、「今この秘密の神呪、宝篋印陀
羅尼を汝じ等、一同に付属する。厳かに尊重し護持し世間に流布し後代末法の世の衆生に伝
えて必ず断絶せしむることなかれ」と説かれております。
図像内容は宝篋印塔の屋根、塔身、基礎と呼ばれる部分に陀羅尼の梵文を塔身の中央には月
輪中に金剛界の五智の種字が描かれる。大日如来(ばん)、東の阿閦(うん)、南の宝生
(たらーく)、西の阿弥陀(きりーく)北の不空成就(あく)をもつて大宇宙が象徴されて
います。 不空訳とする本教は大乗密教に属する経典ですが、それは不空が師の金剛智の没
後に天竺へ赴いた際に,獅子国、セイロンの地で取経し帰唐して翻訳するに至つた南方系密
教の正統経典の一つであつた事が推測される。塔下部には野鳥や走獣や虫類、塔の左右には
四天王、龍王始め、諸菩薩、諸天、童子、諸明神などが描かれる。
宝篋印陀羅尼経は如意宝珠の一切の願を満たす功徳の如きものであり、舎利即ち宝珠を本尊
とする最極深秘の「如意宝珠法」の儀礼に結び付き、真言視して経典の中に説き、更にはこ
れを心呪し、次いではその修法に対する法則が成立するに至つた。仏舎利に二種の解釈あり
て顕教の意に就いては釈迦の遺骨を舎利とする。密教の深秘に訳せば六大所成の万法はすべ
て不二なる法身の体となる。両部の大日如来から始まり一切の諸尊十界の依正は言うまでも
なく、一行者の身も含めてすべて法身の舎利とみなす。更に衆生も諸仏も駄都であり一切の
草木やがれき荊(いばら)等もすべて舎利と言う事になる。宝篋印陀羅尼には  Dhātu-
Garbha と言う句があらわれますがこれは仏塔 Stūpa の古名たる Dhātu-Garbha の処
格です。今日尚、スリランカではその派生語 Ðāgoba を卒都婆・卒塔婆・仏塔の意味に用
います。
制作仏画  大進美術株式会社